電車での無言の攻防

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Jan 6, 2026
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鈍行でゆっくり向かう。湘南新宿ラインに乗って、渋谷から高崎まで。
車内の座席配置は、2席、ボックス席、2席の繰り返し。窓側を向いた座席が連なり、進行方向とは無関係に、乗客たちはそれぞれの向きで座っている。
渋谷を出たときは、車内はそれなりに混んでいた。僕は2席のうちの窓側に座り、隣には見知らぬ人が腰を下ろした。だが列車が郊外へ向かうにつれ、停車駅ごとに人が降りていく。大宮を過ぎる頃には、車内はずいぶん空いてきた。ボックス席も、向かいの2席も、空席が目立つようになった。
それなのに、隣の人は動かない。僕も動かない。
どちらかが席を移れば、二人ともゆったり座れるのに。他に空いている席はいくらでもあるのに。互いに「相手が先に降りるかもしれない」と考えているのか、あるいは「自分が動くのは負けだ」とでも思っているのか。
言葉を交わすわけでもなく、目を合わせるわけでもなく、ただ無言のまま、二人は狭い2席に並んで座り続けた。
車窓を流れる景色を眺めながら、僕はこの奇妙な膠着状態を面白く思った。これは一体、何の戦いなのだろう。譲り合いの精神はどこへ行ったのか。それとも、動かないことこそが、日本人的な配慮なのだろうか。
結局、終点の高崎まで、この無言の攻防は続いたのである。

© yokinist

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