自分探しの果てに
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date
Jan 10, 2025
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stepping-out-of-shell
status
Published
tags
boyaki
summary
輪郭の定まらない自分と向き合いながら
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朝日を浴びながらベランダで珈琲を飲む。最近の習慣だ。いつものように心の中を覗き込もうとして、ふと気がついた。もう何も新しいものは出てこないのだと。自分が何者なのか、まだ形にならないうちから人と関わることは、まるで輪郭の定まらない絵を誰かに見せるような不安があった。
まずは内なる自分の声に耳を傾けながら、輪郭や土台を形作っていこう、どこかそう思い続けてきた。けれど、待てど暮らせど自分という作品は完成せず、いつしか人との距離は、深い溝のように広がっていた。それは案外、他者の言葉で自分が揺らぐことへの、見知らぬ自分に出会うことへの怖れからだったのかもしれない。
珈琲の湯気が朝の光に溶けていく。向かいのアパートでは誰かが窓を開け、鳥の声が街に混ざっていく。人は誰かと出会い、その度に新しい自分に気づいていくのだと思う。内側ばかり見つめていては、そこにあるものしか見つからない。完成された自分なんて、きっとどこにもいない。むしろ、誰かと出会い、語り合うことで、少しずつ自分という人の形が見えてくるのかもしれない。