創造的な想定外の使用法
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Apr 22, 2025
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boyaki
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開発者が想定していなかった使われ方をするのは、面白いところだ。最近、そんな可能性を示す興味深い例を目にした。
ChatGPTの「写真をジブリ風に変換する機能」。本来は写真にアニメのような味わいを加え、日常の一コマを幻想的に彩るためのものだろう。ところが、SNSの一部では「プライバシー保護」の手段として活用されている例があるという。
子どもの顔や個人情報を公開したくないけれど、思い出の瞬間は共有したい。そんなジレンマを抱える人たちにとって、ジブリ風変換は一つの解決策となりうる。実際の人物の特徴は残しつつも、現実の顔とは微妙に異なる表現になるため、プライバシーが守られる。
こうした「想定外の使用法」は、プロダクトづくりの歴史の中で何度も起きている。最も象徴的な例の一つがPost-itだろう。1968年、3M社の研究者スペンサー・シルバーは、強力な接着剤を開発しようとして失敗した。彼が生み出したのは、くっついては剥がれる、接着力の弱い物質だった。
当初、この「欠陥品」は活用法が見つからなかった。しかし数年後、同僚のアート・フライがこの弱い接着剤を聖歌隊の楽譜の目印として使ったことから、その可能性が見出された。「失敗」は、やがて取り外し可能なメモ紙という革新的製品に生まれ変わった。
プロダクトは意図された通りに使うものではなく、私たち一人ひとりの創意工夫によって新たな価値を見出していくものなのだ。こうした先駆的な使い方が、いずれ大きなトレンドになる可能性もある。
開発者として、この現象から学べることは多い。最も重要なのは、失敗と思えるものにも価値が潜んでいる可能性を見逃さないことだろう。また、使い手の創造性を過小評価せず、実際の使用事例を謙虚に観察する姿勢も不可欠だ。
私たちがプロダクトを形作る一方で、プロダクトもまた私たちの行動を形作る。その相互作用の中から、開発者が思いもよらなかった新しい価値が生まれていく。そんな予測不能な進化の可能性こそが、プロダクト開発の魅力なのかもしれない。